Bouchon(ブション) [その他]
「美食の都」と呼ばれるフランス第3の都市リヨンには、
リヨン独特のスタイルのBouchon(ブション)と呼ばれるレストランがあります。
リヨンというと、リヨン郊外にある
三ツ星レストラン「ポールボキューズ」が日本では有名ですが、
Bouchon(ブション)のことは、日本ではあまり知られていないようです。
それでは、Bouchon(ブション)とはどんなタイプのレストランなのでしょうか?
普通の旅行案内書には載っていませんが、
次の本にBouchon(ブション、ブッション)のことが書かれています。
●旅名人ブックス「ブルゴーニュ」
(1999年4月1日発行第1版、日経BP社)
>152ページの「リヨン探訪記」
・・・地元ではブッション(Bouchon)と呼ばれている家庭的な一膳飯屋である。
「食の都」リヨンの本当の楽しみは、こうしたブッション巡りにある。・・・
●世界の100都市「リヨンとディジョン」
(2002年4月7日発行、朝日新聞社)
>8ページ特集・リヨンの「美食」を究める
・・・家庭料理の店「ブション」で土地の食材を余すところなく味わう。・・・
●相原由美子・著「おいしいフランス極上の素材を訪ねる」
(2003年11月5日発行、岩波書店)
>132ページ「独特の雰囲気を持つ居酒屋ブッション」
・・・リヨンにはブッションBouchonという独特の雰囲気を持つ気軽な居酒屋がある。
昔、織物工業が盛んな時代は、過酷な労働を終えた下請けの織物工たちが憩う
場所だった。ここでは食事もできれば、つまみとワインだけを頼むこともできる。
冷えた軽いボージョレーが、4~5センチはあろうかという厚底の460cc入り瓶で
運ばれてくる。この量が、ちょうど気持ちよく飲める一人分の量だという。
瓶もリヨン独特のものでフィエット(filletteフランス語古語で小さな瓶の意)と呼ばれるが・・・
気楽にワインと家庭料理が楽しめるレストランが、
Bouchon(ブション)です。
リヨン新市街のマロニエ通り、メルシエール通り、
旧市街のサンジャン通りなどに
Bouchon(ブション)がありますが、
観光客向けのお店もあるようです。
Bouchon(ブション)のランチ定食はだいたい11~12ユーロですから、
今の為替で1800円~2000円になります。
(円が弱すぎるのを痛感します)
Bouchon(ブション)のメニューというと、
リヨン風サラダ、クネル・ド・ブロシェ(川カマスのすり身)、タブリエ・ド・サプール(牛胃のフライ)、
ピスタチオ入りセルヴェラ(リヨン風ソーセージ)など、シンプルで量が多いのが特徴です。
おいしいフランス極上の素材を訪ねる (岩波アクティブ新書 (92))
- 作者: 相原 由美子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/11
- メディア: 単行本
川魚グージョンの天麩羅 [帰国後]
永井荷風がリヨンに滞在していた頃から
リヨン市を流れるソーヌ川上流のリールバルブ(髭の小島)辺りでは
川魚の天麩羅が有名だったようだ。
藤棚に蔽われたる出窓の欄干には、
川魚天麩羅御料理の札を下げ、
・・・「ふらんす物語」休茶屋(新潮文庫)
通り過ぎる居酒屋へはいって、
土地で自慢の川魚グージョンの天麩羅で晩餐をととのえる時、
・・・「ふらんす物語」蛇つかい(新潮文庫)
‘グージョンの天麩羅’とは?
加太宏邦さんが書いた「荷風のリヨン」(『ふらんす物語』を歩く)に
答えが載っている。
・・・グージョンというのは川はぜのこと。
公害に弱い魚で、今はソーヌ川では捕れない。
昔はてんぷら(フリチュール)といえばグージョンだった。
今、ソーヌ河畔のレストランはどこも決まりきったように
「エペルランのてんぷら」をメニューに掲げている。
ただし、エペルランは海の魚。
加太宏邦さんの「荷風のリヨン」は、
リヨンに行かれる方にぜひ読んでいただきたい本です。
永井荷風「ふらんす物語」 [帰国後]
永井荷風は、
1907年7月30日から1908年3月28日までの八か月、
リヨンに住んでいた。
永井荷風がリヨンに住んでいた理由は、
遠藤周作のような留学ではなく、
銀行勤務のためである。
西暦千九百七年横浜正金銀行雇人になり、米国紐育を去りて
仏蘭西里昴に赴き此処に留る事十箇月余なり。
・・・「ふらんす物語」序(新潮文庫)から抜粋・・・
●横浜正金銀行とは後の東京銀行(東京三菱UFJ銀行の前身行)である。
●紐育=ニューヨーク、里昴=リヨン
永井荷風は、1907年7月29日19時20分パリ・リヨン駅発の
マルセイユ行き夜行列車に乗り、
翌30日夜明け前にリヨンに着いた。
突然、列車が一条の鉄橋を渡る響きに目を覚して見ると
白い壁塗の人家が高い石堤の両岸に立続き、
電燈の光か月の光か、四辺は非常に明るくなっている。
いよりよ里昴の市街に入ったのである。自分は慌忙てて落ちている帽子を冠り、
衣服の塵を払って汽車を下りた。停車場の時計は夜の三時半、
夏の空は星消え月落ちて、もう白々と明けかかるのであった。
・・・「ふらんす物語」船と車(新潮文庫)から抜粋・・・
永井荷風が汽車を下りた駅は、
私がTGVを下りたパールデュー(Part-Dieu)駅ではなく、
ペラーシュ(Perrache)駅だった。
リヨン料理 [リヨンにて]
リヨン料理の特長をあげると、
まず「家庭の味」(家庭料理)であり、
そして「量の多さ」でしょう。
日本の結婚式披露宴で供されるフランス料理が
‘フランス料理’だと思っている方がリヨン料理を食すると、
そのシンプルさ、その量の多さにきっと驚くと思います。
リヨン料理といえば、
リヨン風サラダ、グラチネリヨネーズ(オニオングラタンスープ)、
タブリエ・ド・サプール(牛の胃袋のフライ)、クネル・ド・ブロシェ(川かますのクネル=はんぺん)
セルヴェラ(ピスタチオ入りリヨン風ソーセージ)、テット・ド・ヴォー(子牛の頭と舌の煮込み)
などが有名です。
さて、今年のリヨン滞在では、
「ブラッスリー・ジョルジュ」へ3回行きました。
「ブラッスリー・ジョルジュ」は1836年創業で、
400~450人を収容できる大ホールがあるブラッスリーです。
‘ブラッスリー’とは本来、ビール醸造所という意味だそうですが、
「ブラッスリージョルジュ」は自家製ビールを醸造しており、
本当の‘ブラッスリー’といえます。
リヨン市若月通り [帰国後]
フランスから帰国後、リヨンについて調べている中で、
リヨン市に日本人の名前がついた通りがあることを知りました。
リヨン市8区にある
Rue Wakatsuki(若月通り)です。
1996年6月27日~29日に
リヨンサミットが開催されましたが、
この時に日本の外務省が用意した一連の‘リヨン案内’の中に
「リヨン市若月通り」(経済局、小野正昭)という文があります。
小野さんの文を参照すると、
大正9年から昭和2年まで7年間リヨン領事代理を務めた若月馥次郎さんは、
リヨン在勤中、日本の伝説・おとぎ話の仏語訳を出すなどの業績を残し、
リヨンの住民から深く敬愛された方で、
没後、リヨン市民からの請願により、若月領事の偉業を記念して、
「Rue Wakatsuki」と命名された通りが1930年に誕生したそうです。
来年のリヨン行きでは、
若月通りを訪ねる予定です。
リヨンのお菓子屋さん [リヨンにて]
6月5日(火曜日)から8日(金曜日)までの
リヨン滞在中に行ったお菓子屋さんは次の通りです。
①SEVE(セーヴ)リヨン中央食品市場店
リヨン中央市場(Les Halles de Lyon、別称:ポールボキューズ市場)
のラファイエット通りに面した入口から入ると、正面左にあるお店。
2006年にデザイングランプリを受賞したそうです。
②VOISIN(ヴォアザン)
リヨン銘菓「クーサン・ド・リヨン」というお菓子で有名なお店。
③BERNACHON(ベルナション)
カカオ豆の焙煎からすべてを自店で内製するチョコレート屋さん。
「パレ・ドール」は本当に美味しい。
チョコレートだけでなくケーキもあり、
大統領に献上されたことから命名された「プレジダン」が有名。
④PIGNOL(ピニョル)
ベルクール広場から近いエミール・ゾラ通りにあるお店へ行きました。
ベルクール広場に面したデリカ店もあります。
リヨンの公共交通機関 [リヨンにて]
リヨンでの移動には、公共交通機関を利用しました。
今回使った交通機関は、
地下鉄、トラム(路面電車)、そしてケーブルカーです。
乗車券は、各線共通で、乗車区間に関係なく、均一料金です。
●一回乗車券 1.50ユーロ
●回数券(10枚) 12.50ユーロ
●2時間券 2.20ユーロ
●一日券 4.40ユーロ
※地下鉄、トラム、ケーブルカーの他、
バス、トロリーバスにも乗車できます。
地下鉄、トラムの駅には
自動券売機が設置されていますが、
この操作方法でちょっと苦労しました。
●操作方法が日本的ではないこと (直ぐに馴れます)
●紙幣が使えないこと(コインの用意が必要)
●クレジットカードが使えるが、
日本発行のカードは使えないこと
今回のリヨン行きでは3泊(4日)しましたので、
回数券(初日)と一日乗車券を利用しました。
一日乗車券は、トラムのパールデュー駅近くにある
TCL(リヨン市交通局)の乗車券売場で購入しました。
この売場で一日乗車券を購入すると、
TCLが運行する交通機関の路線図がもらえます。
この路線図はフランス語ですが、とても役立ちます。
リヨン観光局が発行する「リヨン案内」と併用すると、
さらに役に立ちます。
「リヨン案内」は、日本語版もあり、
ベルクール広場にあるリヨン観光局の案内所で
入手することができます。
「リヨン案内」、TCL路線図、そして一日乗車券があれば、
世界遺産の‘リヨン歴史地区(ヴューリヨン)、フールヴィエールの丘、
リヨン博物館、オペラ座、ベルクール広場など
行きたい場所へ、迷うことなく行けます。
TGVでリヨンへ [リヨンにて]
日本からリヨンへの直行便はないので、
パリ・シャルル・ド・ゴール空港(CDG空港)で
飛行機を乗り換えて、空路リヨンへ入るか、
CDG空港駅でTGVに乗り換えて
陸路リヨンへ入るなどの方法があります。
私は、去年も今年も、CDG空港駅でマルセイユ行きのTGVに乗車、
リヨン・パールデュー駅で下車するという方法でリヨン入りしました。
TGVは、営業運転で最高時速300kmを出す
フランス国鉄(SNCF)が世界に誇る高速鉄道で、
日本でいえば、新幹線になります。
CDG空港駅からリヨン・パールデュー駅へは、
TGV地中海線経由で約2時間の乗車です。
CDG空港からリヨンへ入る方法は
他に次のような方法があります。
①空路、リヨン・サンテグジュペリ空港へ
CDG空港で飛行機を乗り換え、
リヨン市郊外にあるリヨン・サンテグジュペリ空港へ入る。
サンテグジュペリ空港からリヨン市内へはバス等で移動が必要。
【利点】CDG空港からCDG空港駅まで荷物を持って移動する必要がない。
【欠点】サンテグジュペリ空港からリヨン市内までシャトルバスで約50分かかる。
②パリ・リヨン駅からリヨンへ
CDG空港からパリ市内へ移動し、
パリ・リヨン駅からTGV地中海線に乗車し、リヨンに入る。
【利点】CDG空港駅よりリヨンへ行くTGVの本数が多い。
【欠点】CDG空港からパリ・リヨン駅までの移動に40~50分かかる。
●参考
①リヨン・サンテグジュペリ空港は、童話「星の王子さま」などを書いた
リヨン生まれの作家サンテグジュペリの生誕100年を記念して、
2000年に改名された(旧名・リヨン・サトラス空港)。
②リヨン市内には、TGV停車駅が、ペラーシュ(Perrache)と
パールデュー(Part-Dieu)の2つある。
リヨンの人口 [出発前の準備]
旅行案内書によって、
リヨンの人口が異なります。
リヨンは、フランス第2の大都市と書いている案内書があれば、
リヨンは、パリ、マルセイユに続く第3の都市と書いている案内書もあります。
●「新・個人旅行‘06フランス」(昭文社、2006年1月初版発行)
>リヨン:人口約44万5000人、面積約47.87平方キロ
ローヌ・アルプ地方の中心都市で、パリ、マルセイユに次ぐフランス第3の都市。
>マルセイユ:人口約80万人、面積240.42平方キロ
●「旅名人ブックス13・ブルゴーニュ」(日経BP社、1999年4月1日第1版発行)
リヨンはフランス第2の大都市。周辺も加えると人口は120万人を数える。
そこで、リヨンの正しい人口について書かれている書籍を探した結果、
「EU統合下におけるフランスの地方中心都市」
(古今書院2003年2月10日初版発行、
著者:高橋伸夫・手塚章・村山祐司・ジャンロベール=ビット)
という本を岐阜県図書館で見つけました。
●フランスの場合、最小の単位地域はコミューンであり、すべての空間単元はコミューンの
集合体として表される。
●リヨン市の人口は1999年に行われた国勢調査によれば、
445,263である。大リヨン圏の人口は、1,164,733であった。
どうやら、リヨン市と大リヨン圏の人口、
どちらを‘リヨン’の人口としてとらえるかによって、
リヨンは、フランス第2の都市になったり、第3の都市になったりするようです。
以下はご参考まで。(上掲書14ページ参照)
①リヨン市 (La Commune de Lyon)
②大リヨン圏 (Le Grand Lyon)
③リヨン大都市地域 (Agglomeration de Lyon)
④リヨン影響圏 (L`Aire Urbaine de Lyon)
⑤リヨン都市地域連合 (La Region Urbaine de Lyon)
EU統合下におけるフランスの地方中心都市―リヨン・リール・トゥールーズ
- 作者:
- 出版社/メーカー: 古今書院
- 発売日: 2003/01
- メディア: 単行本
週刊朝日百科・世界100都市「リヨンとディジョン」を参考にしました [出発前の準備]
私が初めてフランスへ行ったのは、
1998年7月22日のことです。
その当時は食肉関連の仕事をしていましたので、
フランス・ブルターニュ地方にある豚肉加工施設などを
見学するのが目的でした。
いわゆる、出張です。
それ以来、毎年2~3回程度、フランスへ行きましたが、
ブルターニュ地方へ行くことがほとんどでした。
フランス行きが重なるに連れて、
フランスワイン、フランス料理に自然に興味を持つようになり、
1年間に100本飲むという目標を立ててフランスワインを買って自宅で飲んだり、
電話帳で調べ上げた岐阜市および岐阜市近郊にあるフランス料理店を、
次から次へと食べ歩いたりしました。
同時に、フランスに関する雑誌・本を集めました。
集めた書籍の中に、朝日新聞社が2002年4月7日に発行した
世界100都市ここに行きたい第19号に
「リヨンとディジョン」があります。
この雑誌を買った当時はブルゴーニュワインを好んで飲んでいた時代なので多分、
ディジョンに興味があったことが購買動機になったはずです。
昨年、そして今年とリヨンへ行くことになり、
訪問地の事前調査にとっては、この「リヨンとディジョン」も大いに役立ちました。
私は定期購読している雑誌はありませんが、
毎月購入する雑誌はかなり多く、
そして読後は知人に差し上げることがほとんどのですが、
この「リヨンとディジョン」はなぜか保管してありました。
この「リヨンとディジョン」という雑誌の中に、
リヨンの「美食」を究めるという特集があり、
‘家庭料理の店「ブション」で土地の食材を余すとこなく味わう’という記事で
初めて「ブションbuchon」のことを知りました。